台車界のメルセデス「カルティオ」
撮影の時は大量の荷物を一度に運ぶシーンが頻繁に起こる。
当然そんな時は台車を使うことになるのだが、ガタガタと結構な音と
振動を出しながら進み、
挙げ句の果てにはあまりの機材の重さに耐えられずに、車輪がすぐダメになりがちだ。
何台も乗り継いで結局たどり着いたのが、このトラスコ中山さんが
社運を賭けて産み出したであろう(憶測)奇跡の台車「カルティオ」である。
全ての台車を過去のものにした圧倒的性能は大きく分けて3つ。
●軽さ
職業柄、車に載せて移動先で台車を積み下ろす、というアクションが多い。
台車それ自体が重いと、仕事前に疲れきってしまうのだ。
その点、カルティオは名前通り重量が7.9kg。
これはロードバイクの上位車種と同じ軽さ。
つまり片手でひょいと持ててしまうレベルだ。
荷台部分は軽量樹脂を惜しみなく使用。剛性を維持するために計算され尽くしたで
あろう美しい肉抜きによるシェイプアップ。
使うたびに企業努力が垣間見える、というのも特徴のひとつだろう。
●耐加重
公式ではなんと200kgもの貨物に耐えれらる。
いわゆる通常の台車の耐加重平均は150kg。成人女性一人分のプラスである。
実際に測って積んだことはないが、カメラバッグにストロボ、布類など限界まで
載せて、涼しい顔をして現場まで運んでくれた。
エンジンでも同じことが言えるが、できるだけ性能限界の高いものを使って
低レシオで通常運転させるのが物を長持ちさせる秘訣だ。
「耐加重150kgの台車で50kgの貨物を9年間運んだら壊れる」と仮定した場合、
単純計算で「耐加重200kgなら同条件で12年間寿命が持つ」ことになる。
ずっと未来から見たら、結局安くついてたなあ、という話だ。
二度と買わなくていいってくらいに頑丈にできてると思うし。
●静音性
これが台車に求められる最も重要な性能だ。
仕事柄、極力静かに移動することが良しとされているこの業界。忍者のように
スススッと進むのは何よりの財産なのである。
カルティオは道を選ばない。
石畳、アスファルト、舗装路、リノリウム、オフロードetc...
あらゆる地形でとにかく静かに静かに粛々と物を運ぶ。
その乗り心地、押し心地、運転性能の優雅さと言ったら。それはもはや台車界の
メルセデスSクラスと言っても過言ではない。
持ち手に伝わる微弱で上品な振動を、ぜひ体験してもらいたいものだ。
※
最近同じマンションにカルティオを使っている夫人がいて、エレベーターが一緒になる
タイミングがあった。なんだか嬉しくなっちゃって「ウチもその台車なんですよ!
超使いやすいですよね!」と話しかけるも「あっ、ああ、、そうですね、、」と微妙な顔。
若干引いておられた。「人間誰しも自分の持ち物を褒められたら嬉しい」という
あの法則は何だったのか。世知辛い世の中である。