ハサミ ポーセリン

店に陳列されている段階で、料理を盛り付けた時のイメージが

湧いてくる、というのがいい器の条件のひとつだと思っている。

去年、久留米絣(がすり)という上質な「もんぺ」を売っている、

うなぎの寝床というお店に行った時のこと。

もんぺ以外の雑貨も充実しているこの場所で、店の奥に気になる器を見つけた。

棚に陳列された平皿を手に取った瞬間に、強烈な違和感を覚える。

底面にHASAMI PORCELAIN(ハサミ ポーセリン)と記してあるそれは、

私が思う「つるりとした質感」という磁器の固定概念をひっくり返すような

質感と風合いを併せ持っていたのだ。

じゃり、じゃりとざらつく。

まるで土のようなさわり心地。

炭で色付けたような艶っぽいブラック。

柔らかそうにすら見える、ナチュラルカラー。

見た目の軽さとは裏腹に、ずっしりとした重量感。

それなのに凛とした佇まいで、磁器として生成された

美しいフォルムを保つ。

今まで出会った磁器の器のどれにも当てはまらない仕事っぷりに

その場で一目惚れした私は、平皿とマグカップをもんぺと一緒に家へ連れ帰った。

帰宅後、さっそくサラダを乗せてみる。

やはりいい器は、料理があって初めて完全体となる。

これは後日知ることとなるが、カレーでもパスタでも、

あらゆるメニューと相性が良いオールラウンダーっぷりよ。

異質であるにもかかわらず、自分の棚に元々ある手持ちの器とも

違和感なく共生できるのは、そのシンプルさゆえなのか。

使うたびに「いいもの買ったなあ」と思わせてくれる。

また、コーヒーを入れたマグカップの口触りには、陶器のようなぬくもりを感じる。

手に持つたびに心地よく、味わいがより深くなった気分にさせる。

さらにどちらもフォトジェニック。SNS上で、

オシャレな生活を送っているフリを演じられるところもいい。

こんなに心を射抜かれたのは牧谷窯以来。

アイデアが形になって、人々の生活に溶け込む。

とても素晴らしい仕事だなあと思う。

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